2015年3月26日
一般財団法人 沖縄美ら島財団(沖縄県本部町)の中村 將 参与らの研究グループは、ティラピアの稚魚を高温環境下で一定期間飼育することで、成長後も半永久的に不妊化させることに成功しました。この成果を活用することで、世界中で養殖されているティラピアの養殖技術の向上に貢献することが期待されます。この研究成果は、アメリカの国際科学雑誌『General and Comparative Endocrinology』に掲載されました。
■発表雑誌■
雑誌名:General and Comparative Endocrinology
論文名:High temperature-induced sterility in the female Nile tilapia, Oreochromis niloticus
著者名:一般財団法人 沖縄美ら島財団 中村 將 参与、
岡山大学理学部付属牛窓臨海実験所 小林 靖尚 助教、ほか
掲載日:2015年3月5日
■ポイント■
●ティラピアの稚魚を37℃以上で45日間以上飼育した結果、不妊化させることに成功した。
●不妊化したティラピアは、通常の成熟雌に比べて大きく成長することが分かった。
●この研究結果は、ティラピアの養殖技術に大きく貢献すると期待される。
※本研究は、文部科学省の科学研究費助成事業における支援により行なわれました。
魚類は成長して卵巣が成熟すると、栄養が筋肉や肝臓から卵巣に移動して肉質が低下したり、体の成長が妨げられます。そのため多くの養殖場では、卵成熟による養殖魚の価値低下が課題になっています。特にティラピアは繁殖力が旺盛なため養殖地はすぐに稚魚で溢れてしまい、魚が大きく育たず養殖の障害となっています。
また、ティラピアは養殖地から逃げた魚が繁殖し、在来種を捕食して生態系を破壊することが知られています。沖縄本島の河川でも同様の事態が起きています。これらの問題を解決するためには、ティラピアを不妊化して養殖する技術の確立が求められています。
近年、乱獲などによる世界的な魚類資源の減少が大きな問題として取り上げられており、魚類の養殖技術に注目が集まっています。
ティラピアの高温飼育による不妊法は、体が大きく成長するため、より商品価値のある養殖魚になります。また薬品を使わない方法であるため、食べても安全というメリットがあります。ティラピアの養殖は、世界で年間250万トン(魚類中第2位)が生産されています(国際連合食糧農業機関(FAO)の調べ)。簡単な手段で、大きくて美味しいティラピアを生産できる本研究の成果が、今後、ティラピアの養殖技術の向上に貢献されることを期待しています。