トゲドコロ(クーガ芋)の機能性成分ジオスゲニン濃縮方法特許出願、臨床研究に着手

2021年7月6日

トゲドコロ(クーガ芋)の機能性成分ジオスゲニン濃縮方法特許出願、臨床研究に着手
〜産学連携で「幻の芋」を沖縄の新たな特産品へ~

 

株式会社沖縄テレビ開発ヘルスケア事業部はトゲドコロ(クーガ芋)に多く含まれる機能性成分ジオスゲニンを濃縮する方法を開発し、特許出願した。トゲドコロ(クーガ芋)は古くから滋養強壮作用がある食材として食されてきた。希少性が高いものの日持ちしないなどの特性から「幻の芋」と呼ばれ、流通量が少なかった。そこで、当社は、長期保存可能で、かつジオスゲニンの含有量を高めるトゲドコロの製造方法について特許を出願し、流通販売していくため商品開発を進めている。

 


トゲドコロ栽培の様子

 


収穫したトゲドコロ

 

トゲドコロ(クーガ芋)とは
トゲドコロはヤマノイモ目ヤマノイモ科ヤマノイモ属と植物学上は分類される。自然薯や長芋と同じヤマノイモ属にある近傍種である。但し、トゲドコロは寒さに弱い為、日本国内では沖縄県が生産の北限となっている。他の国内ヤマイモと比較して機能性成分ジオスゲニンが高含有されている。琉球王国時代より薬効のある食材として滋養・健康食に利用されてきており、琉球国王に仕えた御典医「渡嘉敷通寛」が1832年に書き記した琉球国に伝わる機能性食品素材をまとめた「御膳本草」にもトゲドコロの効能が紹介されている。

 

トゲドコロジオスゲニン濃縮方法特許出願概要
従来、沖縄県内においてトゲドコロは生食用として販売されていたが、生産量と日持ちの観点から、ほとんどが県内のみの流通であり産業化には至らず限定的であった(トゲドコロは一年生植物)。保存性を考慮したトゲドコロ乾燥粉末が一部供給されているが、現状において流通可能な保存形態である既存の乾燥粉末には多糖類が多く含まれており、ジオスゲニンを有意な量摂取しようとすると糖質の過剰摂取につながる可能性がある。これらの問題を受けて、当社ではトゲドコロから糖質や粘性物質を除去することでジオスゲニンを効率よく、かつ食べやすく摂取できるようになるのではないかと考え、トゲドコロから糖質除去を試みた。当社が特許出願した製法では既存の乾燥粉末に含まれるジオスゲニン量が255mg/100g(dry) から1,324mg/100g(dry)に上昇し、約5倍に濃縮することができる。さらにこの製法で得られた粉末は山芋特有の粘性も抑制され、食感が良好で様々な飲食品への利用が可能となる。

 

ジオスゲニンとは
ジオスゲニンは性ホルモンの前駆体、DHEAと類似した構造を持っている。DHEAは「若返りホルモン」と呼ばれ、免疫力を向上させ、筋力の維持に貢献すると考えられているが、加齢とともに低下し、70歳時ではピーク時の20%まで低下してしまう。DHEAは、骨格筋の糖取り込み・利用の調節、筋量・筋力の増強、脂質代謝の亢進に影響することが明らかになっており、DHEAの分泌量が低下している中高齢者にとって、分泌量の維持・改善はエイジングケアの観点から重要である。しかしながら、日本の保健機能食品の分野においてはDHEAをはじめとする性ステロイドホルモンを含有するサプリメントの販売は認められていない。そのようなことから、低下したDHEAを安全に代替する食品成分として、トゲドコロジオスゲニンの研究が立命館大学で進められてきた

 

産学連携で機能性の解明
当社は立命館大学と産学連携し、ジオスゲニンの機能性解明の研究も進めている。2020年沖縄県内で高齢者を対象とした予備的な臨床試験を実施し、トゲドコロのジオスゲニンが高齢者の減少した性ホルモンの生体調節機能を補う可能性が確認された。また、今年度の沖縄県新産業事業化促進事業に採択され、機能性解明のため今後さらに大規模な臨床試験を立命館大学と共同で実施する。

 

 

産業化に向けた生産規模拡大
原料の確保が産業化の課題となっていることについて、2019年に契約農家2人・生産面積1,500坪であったところを2021年は契約農家31人・生産面積23,500坪まで拡大。収穫の手間改善のために新たに農業機械導入等による効率化の検討を契約農家と共に模索中である。また、栽培方法に関する研究や農法がない為、独自の取り組みとして、単収向上と収穫効率向上を目的として「クーガ芋通信」を隔月で発行。栽培に関する情報を契約農家へ随時共有している。

 

今後の展望と販売計画
2021年8月に立命館大学と共同でさらなる臨床試験を実施し、2022年春頃にサプリメントや栄養補助スナック等の上市を目指している。当社はファブレス型の商品開発となる為、支援機関からの技術指導も受けながら、製造委託先や生産農家、ヘルスケア事業者等の販売パートナーとトゲドコロを核としたエコシステム構築に向けて引き続き研究開発を進めていく。